福岡高等裁判所 平成11年(行コ)16号 判決 2000年2月18日
主文
一 本件各控訴及び控訴人兼当審原告の各請求をいずれも棄却する。
二 控訴費用は控訴人兼当審原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人兼当審原告(以下「控訴人」という。)
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人別府市長は、学校法人立命館に対し、立命館アジア太平洋大学に係る補助金一億円を支出してはならない。
3 被控訴人兼当審被告A(以下「被控訴人A」という。)は、別府市に対し、金九億三〇〇〇万円及びこれに対する平成一〇年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4 被控訴人Aは、別府市に対し、金一八億七〇〇〇万円及び内金一五億八〇〇〇万円に対する平成一〇年一一月一日から、内金二億九〇〇〇万円に対する平成一一年四月一日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
5 被控訴人Aは、別府市に対し、金一三億円及びこれに対する平成一一年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
6 訴訟費用中、平成一一年(行コ)第一六号事件について生じたものは被控訴人らの、同第二〇号、第三一号事件について生じたものは被控訴人Aの各負担とする。
(控訴人は、当審において、原審における差止請求を第2項のとおり減縮し、行政事件訴訟法一九条一項に基づき、第4項(平成一一年(行コ)第二〇号)及び第5項(同第三一号)の請求に係る訴えを併合して提起した。)
二 被控訴人ら
主文同旨
第二当事者の主張
次のとおり補正するほかは、原判決三頁三行目から二九頁二行目までのとおりであるから、これを引用する。
一 原判決三頁七行目「被告Aを「被控訴人A」と改める。
二 原判決四頁九行目の次に改行して次のとおり加える。
「また、被控訴人Aは、別府市長として、立命館に対し、本件補助金のうち平成九年度分四億七〇〇〇万円及び平成一〇年度分一一億一〇〇〇万円を交付することを平成一〇年一〇月末日までに決定し、これらを交付した。そして、同被控訴人は、平成一一年三月三一日にも本件補助金のうち二億九〇〇〇万円を交付することを決定し、そのころこれを立命館に交付した。
さらに、同被控訴人は、平成一一年一〇月二九日までに、立命館に対し、本件補助金のうち一三億円を交付することを決定し、同日これを交付した。」
三 原判決五頁初行「国費」の次に「ないし公費」を加える。
四 原判決七頁五行目「自治体」を「自治法」と改める。
五 原判決一〇頁五行目「更に」を「借入れをしなかった場合に比べて」と改める。
六 原判決一一頁一三行目の括弧書きを削る。
七 原判決一六頁一一行目ないし同一二行目の括弧書きを削る。
八 原判決一七頁初行及び同四行目の各「九億三〇〇〇万円」をいずれも「四一億円」と改める。
九 原判決一九頁初行「三二億七〇〇〇万円」を「一億円」と改め、同五行目「一日から」の次に「、一八億七〇〇〇万円及び内金一五億八〇〇〇万円に対する不法行為後の日である平成一〇年一一月一日から、内金二億九〇〇〇万円に対する不法行為後の日である平成一一年四月一日から、一三億円及びこれに対する不法行為日である平成一一年一〇月二九日から、各」を加える。
一〇 原判決二四頁一一行目「計画」の次に「(文部省大学設置審議会大学設置計画分科会の昭和五九年六月六日付報告)」を加える。
一一 原判決二七頁一〇行目の括弧書きを削る。
理由
一 当裁判所は、控訴人の各請求はいずれも失当であると判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決二九頁六行目から六六頁四行目までのとおりであるから、これを引用する。
1 原判決三〇頁一三行目「という。)」を削る。
2 原判決三一頁一一行目「定書案」」の次に「といい、これに係る協定を「本件協定」」を加える。
3 原判決三三頁一一行目末尾に「なお、平成一〇年度の本件補助金に係る歳出予算案は同年三月二三日に、平成一一年度の同歳出予算案は同年三月一九日に、それぞれ市議会により可決されている(弁論の全趣旨)。」
4 原判決三四頁一〇行目「記録上明らかな事実、」を削る。
5 原判決三五頁五行目の次に改行して次のとおり加える。
「また、被控訴人Aは別府市長として、立命館に対し、本件補助金のうち平成九年度分四億七〇〇〇万円及び平成一〇年度分一一億一〇〇〇万円を交付することを決定し、平成一〇年一〇月二八日これらを交付した。そして、同被控訴人は、平成一一年三月三一日までに本件補助金のうち二億九〇〇〇万円を交付することを決定し、同日これを立命館に交付した(争いのない事実、弁論の全趣旨)。
さらに、同被控訴人は、平成一一年一〇月二九日までに、本件補助金のうち一三億円を交付することを決定し、同日これを立命館に交付した(争いのない事実、弁論の全趣旨)。」
6 原判決三七頁七行目「贈与」を「交付」と、同一〇行目「によける」を「における」とそれぞれ改める。
7 原判決三九頁七行目「三二億七〇〇〇万円」を「一億円」と改める。
8 原判決四〇頁五行目「三二億七〇〇〇万円」を「一億円」と改め、同九行目「支出」の次に「(支出負担行為ないし支出命令の趣旨と解される。以下同じ。)」を加える。
9 原判決四二頁初行の次に改行して次のとおり加える。
「なお、控訴人は、憲法八九条後段の趣旨につき、右に述べた公費濫用の防止のほかに、慈善、教育、博愛の事業が時々の政治勢力によって左右され、事業の本質に反することになるのを防止することをも挙げ、これを前提に、本件補助金の支出が違法である旨るる主張する。しかし、右に述べたように、慈善、教育、博愛の事業は、国、地方公共団体等との厳密な分離を本質的に必要とするものではないのであるから、憲法八九条後段の趣旨に関する控訴人の右主張は、採用することができない。また、平等原則違反、比例原則違反、補助金決定の経緯の不明確を主張して、本件補助金の支出が私立学校法五九条所定の「教育の振興上必要があると認める場合」の要件を欠き、ひいては憲法八九条後段に違反する旨の主張も、独自の見解であって採用できない。」
10 原判決五七頁初行「できず、」の次に「右証言及び陳述は」を加える。
11 原判決六〇頁末行「トキワ」を「トキハ」と改める。
12 原判決六二頁末行の括弧書きを削る。
13 原判決六四頁四行目の次に改行して次のとおり加える。
「3 本件貸付けについての貸付規則、運営要綱違反の主張について
控訴人は、請求原因3の(三)(2)のとおり、本件貸付けは対象事業、貸付手続等において貸付規則ないし運営要綱に違反し、ひいてはこれにより捻出された資金を原資とする本件補助金の支出も違法となると主張する。しかし、仮に、本件貸付けについて控訴人が主張するような違法事由があったとしても、本件貸付け自体の違法性はともかく、これにより確保された一般財源を原資とする(後記4の判示参照)本件補助金の支出が違法となるとは解されないから、控訴人の右主張は失当である。」
14 原判決六四頁五行目「3」を「4」と改める。
15 原判決六六頁三行目ないし同四行目「五号」を削る。
二 以上によれば、原判決中、控訴人の各請求のうち当審においても維持されているものを棄却した部分は相当であり、本件控訴及び控訴人が当審において追加した各請求はいずれも失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 將積良子 裁判官 兒嶋雅昭 裁判官 原啓一郎)